zen-noh-ren’s diary

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活躍するMIー株式会社キャリ・ソフィア代表取締役 木山美佳さん

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今回ご登場いただくのは木山美佳さん。エキスパート・マネジメント・インストラクター(EMI)資格を取得されている一方で、株式会社キャリ・ソフィアの代表取締役、研修講師、また全能連としては昨年に続いて今年7月のMC/MI大会での講演講師や資格認定の面接審査員もお願いした、まさにマルチプレーヤーとしてご活躍中の木山さんに、お話を伺いました。

 

講演/「働き方改革」実現のための 〜多様な人材を活かすポジティブ組織へのアプローチ〜

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講演では、ダイバーシティ時代のキャリア形成、21世紀の心理学の潮流などを通し、ポジティブ組織作りの必要性についてお話されました。中でも傍聴者の興味を引いたのは「レジリエンス(Resilience)」と呼ばれる心理学の概念です。

 

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レジリエンスとは?】

一般に「弾力、回復力」と訳される語。近年は「状況に対して、私たちが反応する仕方をコントロールし、挑戦(課題)や逆境から立ち直る能力」という心理学的な意味で使われているケースが増えている。

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木山氏の講演では、レジリエンスのトレーニングを応用し、職場におけるレジリエンスを人材育成に使おう、というお話がありました。

レジリエンスを学ぶことのメリットとしては

抑うつの予防として効果的

・希望に満ち、楽観的で生産的な態度を開発する

・大人になっても学習可能。学ぶのに遅すぎることも早すぎることもない

とされ、レジリエンスの低い例として「待ち合わせに相手が現れない不安からキレて周囲に当り散らす男性」の動画や分析ツールとして「心の中の犬を見つける」メソッドなどを紹介。「心の中の犬」では、自分の心の中で、批判犬・正義犬・負け犬・謝り犬・諦め犬・心配犬・無関心犬のどれが吠えているのかを考え、吠えられた後の感情に気づくこと、解決のサイクルに変えること、さらには自律型人材育成のためのフロー理論の紹介で締められました。

 

そして講演の後、レジリエンスをどう使って職場をよりポジティブにしていくか、その方法や効果などを伺いました。

 

インタビュー/レジリエンスを通して伝えたいこと

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ーー木山さんがレジリエンスを学ばれたきっかけを教えてください

 

木山氏(以下、木山):もともと、この概念はメンタルヘルス領域で注目されていて、人材系の研修に取り入れている企業はすでにありました。なので、言葉は知っていたのです。ある時ハードな仕事があり、もうダメだ…と折れそうになった時にレジリエンスの本を読んで目が覚めたように感じました。これから働いていく中で知っておくと非常に役にたつ理論だと思い、そこから勉強を始めたのです。

 

ーー実際の研修に取り入れることは多いですか?

 

木山:そうですね。私は研修をパッケージにはしていないので、研修先の問題点をヒアリングして研修内容を設計していくのですが、最近はキャリアデザイン+レジリエンスの研修が多くなってきていますし、とても好評です。

講演の中でもお話しましたが、ポジティブ組織へのアプローチは、ポジティブ心理学を柱として、「アンガーマネジメント」もしくは「レジリエンス」をツールの一つとして取り入れています。アンガーマネジメントは「怒りのコントロール」、レジリエンスは「逆境を乗り越える力」です。キャリアデザインはするものの、実際には考えた通りにはいかないことが多いものです。仕事をしていく中では予想もしていなかったトラブルもあれば、いきなりの転勤もあり、キャリアの8割が予期せぬ偶然の出来事で決定されるといわれていて、最初のデザイン とは違うものになってしまう。そんなふうに壁にぶち当たったとき、困難や逆境を乗り越えて立て直す力はどんな世代でも必要なのではないでしょうか。

 

ーー木山さんは、ご自身も自分のキャリアに悩まれた時期があったとか。

 

木山:はい。いわゆるバリバリのキャリアウーマンだった時に妊娠・出産を経験しました。それまでは長時間労働も厭わず仕事にあけくれていたのに、出産後に1年半のブランクを経て、会社へ戻ったら今までできていたはずの仕事ができなくなっていていたのです。それでも子どもは保育園に迎えに行かなければいけない。バタバタと焦って子どもを迎えに行くと、お迎えが最後になった自分の子どもが悲しそうにこっちを見ている。子どもはずっと欲しくてやっと恵まれたので、大切に育てたいと思っていたのに。仕事は大好きだから完璧にこなしたいのに。そのどちらもできなくて、情けなくて涙が出ました。そうして自分を追い詰めて心が折れそうになっていた時、信頼していた先輩から「あなたは視野が狭くなっている、もっと先を見てごらん」と言われて、肩の力が抜けたのです。頭で考えていた「完璧」よりも、今できることを精一杯やっていこうと思いました。

 

ーーそれが、ポジティブ心理学を人材教育に取り入れるきっかけにもなったのでしょうか?

 

木山:そうですね。私は幸運なことにそうやって気づかせてくれた人がいたけれど、そこで潰れてしまう人もたくさんいるんじゃないかと気がつきました。

ポジティンブシンギングの例として、「半分だけ水が入ったコップがある。これを『もう半分しかない』と思うか、『まだ半分ある』と思うか」とよく言われますよね。以前の私には、これは「単に『物は考えよう』ってことじゃないか」とあまり心に響かなかったのです。実際問題としては何も変わらないと思っていました。確かに現実に差はないのです。テーブルの上にはコップに半分の水。しかし、ものの捉え方が変わると結果が変わるのです。

これを「もう半分しかない」と思う人は、いつまで経ってもコップに半分しかない状態。しかし「まだ半分ある」と思える人は、後々振り返った時にこの出来事の意味づけが変わります。例えば私の場合は、子育てと仕事が両立できず「コップに半分」の状態でした。「もう仕事なんてできないんじゃないか…」とそのままネガティブ思考でいたら、結局仕事は辞めていたと思います。そして子どもが大きくなって手が離れた時「あの出来事が乗り越えられなかったからだ」「仕事をしたいと思っていた時に続けていればよかった」と後悔していたと想像できます。

しかしそこでレジリエンスを発揮できたので「あの出来事があったから今の私がいる」と考えることができます。起こった事実は同じでも、ポジティブに捉えると振り返った時にそれがひとつの通過点として必要だったと意味づけができるのです。

 

ーーポジティブに考えるとその後の行動が変わるのは理解できますが、やはりネガティブ思考の人にはなかなか難しいものなのではないでしょうか。

 

木山:そうですね。でも、それは思考の癖でしかないのです。トレーニングによって、誰でも癖を変えることができます。レジリエンス研修はネガティブ感情のトレーニング方法です。感情のコントロールができるかできないかで、仕事や人生の楽しさが全く違ってきますよ。

講演では「犬に吠えられた後の感情に気づく」という項目があったのですが、その中で「粘着性のある思考と感情を思い出す」というワークがあります。失敗したことや怒られたことなど、嫌な出来事は時間が経ってもずーっと考えてしまいますよね。その粘着性の思考に気づいて、「また私はこのことを考えている」と距離を置くトレーニングをします。嫌な感情と一体化していることは絶対にプラスになりません。かえって物事を悪い方向へ仕向けてしまいがちです。

 

ーー木山さんが研修をされる中で、気になることはありますか?

 

木山: 私は、研修をする時はだいたい「いいところ」「改善点」「いいところ」とサンドイッチにして伝えているのですが、それでも受講後のレポートを読むと、特に若い世代の方で「このままではダメだと思いました」「性格を直したいと思いました」など、素直に反省しすぎてしまう傾向があります。その分、彼らは自分の長所を見つけることにすごく苦しんでいます。しかし逆境にぶち当たった時には自分の強みを知らなければ乗り越えられないと思うのです。なので、そういう方々にはレジリエンス研修は非常に有効だと思いました。自分の強みを理解して、心の資源にしておく必要がありますから。

 

「誰もが幸せに働ける職場づくり」を目指して

 

ーー現在、キャリアアップや女性活用などの研修を精力的にこなしていらっしゃいますが、今後の活動は?

 

木山:私の最終的な目標は、「誰もが幸せに働ける職場づくり」です。キャリア形成はひとつの大テーマではあるのですが、ポジティブ心理学レジリエンスはその中のパーツのひとつです。いろいろなパーツを取り入れながら、みんながもっと元気に、やりがいを持って働ける組織や社会の仕組み作りに関わりたいと思っています。幸いなことに、近年の少子化ダイバーシティ問題と絡めて、長い時間会社に残っているよりも効率よく働く方が評価される時代になってきました。仕事が苦役になる時代はもう終わるだろうと思います。「仕事は苦しくなくてはいけない」という時代から「楽しく仕事をしよう」「お互いにアイデアを出し合って新しいものを作ろう」という時代へと変わっていこうとしている今だからこそ、個人個人がそれぞれに誇りを持って仕事に向かい、楽しく人生を過ごしていけるように、全力でフォローをしていきたいと考えています。

 

ーーありがとうございました。これからの木山さんのご活躍を期待しています。

 

 

<プロフィール>

木山美佳 氏

大手人材会社でキャリアコンサルタント・研修講師を務める。その後、航空系研修会社にて研修講師を経て、株式会社キャリ・ソフィア 設立。代表取締役の傍ら、自身でキャリアデザイン、リーダー育成、女性社員育成上司力、ダイバーシティコーチングなどの研修を行っている。プライベートでは一児の母。

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