zen-noh-ren’s diary

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ICMCI 2016年度Global Conferenceに出席しました。

公益社団法人 全日本能率連盟 マスター・マネジメント・コンサルタント 

 株式会社セントジェームズアソシエイツ 代表取締役  萩原泰之 

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ICMCI国際公認経営コンサルティング協議会の2016年度グローバル会議が10月19日から20日まで二日間カナダ・トロントで開催されました。併せて、CMC(公認マネジメント・コンサルタント)カナダ協会がスポンサーとなって開催された、Art of Leadership講演会に出席しました。

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ICMCI Global Conference

 ICMCIは50カ国に展開する世界最大級の経営コンサルティング協会の集合体である。ホストCMC Canada会長Mr. Bob McKaren(写真 左) と ICMCI会長 Mr. Sorin Caian(写真 右)から、今年のGlobal Conference (Management Consulting Week)のテーマを ”Consulting 4.0-Are you ready? Digital Disruption”(デジタル創造的破壊時代のコンサルティング 4.0) として開催する旨冒頭挨拶があった。

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今回のGlobal Conferenceには、ホスト国カナダを主体に北米各国、オーストリア、ハンガリー、オランダ、ドイツ、イギリス等欧州各国、アジアから中国、韓国、シンガポール、そして日本から総計20ケ国、100名が参加した。

 19日、20日の二日間の会議は1時間程度のプレゼンテーションと2回のパネルディスカッションで実施された。大きくテーマをくくると①北米カナダでのコンサルティング業界の最新動向、②Consulting 4.0関連として、”Digital Disruption(「デジタル革命による創造的破壊」)”に関する4つのテーマプレゼンテーション(TMT(テクノロジ・メディア・通信動向)、ビッグデータUBER動向、Blockchain動向)、③創造的破壊に関連し重要なたトピックス3つ(プライバシーをどう捉えるか、クライアント体験をベースにしたコンサルティング、年代別コンサルタントの考え方)によって構成され、最新の状況が北米のコンサルタントや著名なマーケティングマネジャーによって報告された。

 

 北米コンサルティング市場

いわゆる「戦略提言、業務改善、人事、IT」という伝統的なコンサルティング領域と「BPO(サービス受託)」の部分を合わせると、世界の市場規模は約20兆円。その中で、北米は55%(カナダは全体の5%)。Digital Disruptionの波を受けて、クライアントは経営変革したい(まず業務改善から)と感じている。その鍵は、ITであり、AI/Big Data/IoT利用等の技術革新をどう事業に取り込むかがクライアントの期待となっている。その意味で、ITに関連するコンサルティングが今後拡大する傾向にあるという説明があった。 また、北米市場におけるコンサルティングサービスの購買については「リスク管理」の観点から購買ルールの適用が官公庁、私企業からもより求めらてきているとの報告があった。中堅コンサルティング会社としては、Big 4が優勢を誇る市場で、自らの得意技(ブランド)を磨き、勝てる案件に注力すること(Pick your battle)が重要とのアドバイスが説明者からあった。

 

② デジタル革命による創造的破壊

TMT市場動向については、今後のディジタル革命を牽引するのは、モバイル機器であり、ミレニアル世代(1980年から2000年に生まれた世代)であると、その消費動向が紹介された。仕事用のLaptopとSNS中心のSmartPhoneは今後も成長、一方Tabletの出荷は下降気味。TV視聴はあまり減らない等の動向調査結果が報告された。

ビッグデータについては、カナダでは2/3の企業が実績を中心に活用しているが、今後のオペレーションの予測には活用していない。今後、環境が激しく変化していく中でビッグデータを活用することは有効だが、データサイエンティスト、データアナリストを中心にリソースが不足していることが課題。

UBERのドライバーを実際に経験したPwCコンサルタント(写真:Mr. Ted Graham)から、今後個人所有の各種移動手段がサービスとして提供され、従来の交通サービスが大きく変化するという報告があった。タクシーに限らず、個人住宅での宿泊サービス(Airbnb等)をはじめとして子供用医療、介護サービス等あらゆる場面で、個人間で提供されると予測(The Uber of Everything)。日本の状況も含め、今後既存団体との確執、規制との戦いが激化するとの見方もある。f:id:zen-noh-ren:20161109141255j:plain

Blockchainは、第二のインターネット革命として各国でも検討が進んでいる。分散型台帳管理ができるため、果たしてその情報(価値)がどこからどこに送られたかという記録が明確になる。今後、選挙、医療記録等に適用が可能。すでにカナダのBritish Columbia州はその導入を今年初めに発表した等の動きが紹介された。ここでも規制との戦いが既に始まっている。

 

③ 「創造的破壊」に関連する重要テーマ

プライバシーに関する世界的権威であるトロント・ライアソン大学教授Dr. Ann Cavoukian:写真 下)のプレゼンは非常に興味深かった。プライバシー(基本的に個人情報の保護)は、コンプライアンスの問題として捉えるのではなく、企業経営そのもの。対処していない場合のリスクとその費用は膨大となる。一方、きちんとプライバシー体制をとっている企業・団体は価値が高い。Zero Sum(どちらか)ではなく、Positive Sum(全機能的)の考えにたって、より積極的にプライバシーを捉えるべき。博士が提唱する PdD(Privacy by Design)は、最近EU、米国政府、日本政府で有効と認められてきているという説明内容だった。すこしプライバシーに関する考え方が変わってきつつあると感じた。

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パネルディスカッションは、中堅(Partner)と若手(Millennials)のふたつがあったが、いずれも「ディジタル革命がもたらす企業環境の変化に対し、クライアントが、IT技術の活用による経営戦略、業務改善を望んでいる」という印象を述べていた。しかし、単独でITの様々なスキルをカバーするのは難しく、複数のコンサル会社あるいは、IT事業体が連携していく方向が今後増えるとの示唆があった。

 10月20日の夜、ICMCI主催のConstantinus Award(年間最優秀マネジメントコンサルタントの表彰)があり、オーストリアのコンサルタントが受賞した(写真 下)。

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The Art of Leadership

 10月21日は、CMCカナダのスポンサーで「激動時代におけるリーダーのありかた」をテーマに、リーダーシップコンサルタント、研究者、著作家が6名、各々1時間の講演会を行った。朝、10時からお昼休みを挟んで6時間講演が続く。巨大なホールに1,600名が詰めかけ、最初から最後まで熱心にメッセージを聞く姿が非常に印象的であった。

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6人の講演者のメッセージを要約すると、①リーダーシップとは、メンバーが属する組織について、ビジョン、方針を明確化するだけではなく、次世代のリーダーそのものを育てることが最重要、②そのためには、リーダーそのものの人間力がなければとても務まらない、③まず行動が大切、言語化が大切、自らがハッピーと感じていないと(その状況にないと)とてもいい仕事はできないし、大きな成功も獲得し得ない等々。

 カナダは、1600年代の欧州からの移民から国が形成されている。イギリスだけではなく、フランスからの移民も建国に加わっている。特に最近は、アジアからの移民が欧州よりも多くなっている。正に、ダイバーシティそのものの社会である。ダイバーシティを考えようではなく、前提条件がマルチナショナルな社会で、人を組織を動かすリーダーシップはさぞかし大変であろうと感じるが、今回の講演で感じたことは、「多様な社会、組織そしてメンバーであるからこそ、人間性が豊かであること」、「リーダーとて一人の個人、メンバーとは個人として対することが重要」「アイディアであれもっとレベルの違う方針であれ、明確に言語化しないと伝わらない」という極めて明確なポイント。今後、日本社会は更に多様化が進むと思うが、ある意味恐れることではなく、自然に自らの価値を認識し、メンバーや社会に伝えていけばいいのであろうという印象を強く持った。

 なお、来年2017 年度のICMCI Global Conferenceは中央アジア カザフスタン共和国の首都アスタナで9月初めに開催される旨発表があった(写真は、CMCカザフスタンのグルサムさん)。カザフスタンは、昨年ロシアとともに「ユーラシア経済同盟」を発足させ、今後経済成長を計画。中央アジアの優等生といわれた同国の成長環境でのコンサルティングのあり方を学ぶには良い機会と感じた。東京からは北京か、モスクワ経由と少し時間がかかるようだが、是非参加したいものだ。

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以上