zen-noh-ren’s diary

マネジメント業界とプロフェッショナル人材に向け、情報を発信していきます。

【インタビュー】梅島みよ氏が語る「人材マネジメントの未来」<前編>

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 日本における唯一のマネジメント関係団体の組織機構として創立された全日本能率連盟。1949年の創立以来、マネジメントの分野で日本経済の発展に寄与するための活動を展開してきました。
この度、コンサルタント業界の先達たちの足跡を残し、広く伝えていくためのインタビューを始めます。

第1回は、全能連にとって以前より関係の深いMSC株式会社マネジメントサービスセンター)の創立メンバーのお1人である梅島みよ氏。日本の人材育成・人材戦略のプロフェッショナルの草分けとして、述べ100万人以上の育成を支援してきたMSCの顧問です。御年92歳になられる梅島氏が感じる現在の人材育成事情、そしてこれからの人材育成のあり方について語っていただきました。

(取材・構成:全日本能率連盟 編集部)

米軍キャンプ時代の上司が自分のロールモデル

——MSC株式会社マネジメントサービスセンター)は今年50周年になりますが、梅島先生が個人としてビジネスに関わってからですと、どのくらいになるのでしょうか?

 

梅島氏(以下、梅島):学徒出陣の頃から考えると、70年以上になりますね。戦中は、女生徒も飛行機工場でナットのバリ取りやエンジンのオイルキャップの面出しなどを行っていたんですよ。
学校を卒業して最初に勤めに出たのは、実家の隣の市にある海軍技術研究所です。そこでは先生方の秘書をしていました。やがて終戦になり、することがなくて結婚してしまったのですけど(笑)。 

 

——ご主人には言えませんね(笑)。その後、出産を経て、人材育成キャリアのスタートとなる米軍キャンプに勤められたのですね。

 

梅島:はい。最初は広報部です。日本の各社新聞を読み、米軍をどのように取り上げているかを調べ、反日親日に分け、翻訳する仕事をしていました。私の通っていた女学校は静岡英和女学校というミッションスクールだったので、先生の半分はカナダの宣教師でした。その後、津田英学塾に進み、英語を含めた異文化に少しは触れていましたし、子どもが少し手を離れたものの下の子は3歳でしたから、保育園の近くにあった米軍のキャンプは勤めるのに都合が良かったんです。

 

——著書の中で、米軍キャンプ時代の上司が自分のロールモデルだと書かれていましたね。 

課長の品格―信頼と尊敬を得るための31の方法

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梅島:そうです。米陸軍司令部広報部の課長、ヘレン・フジタさんという女性です。この上司は、すごく褒め方の上手な方でした。私が100本目の翻訳をした時には、最初の翻訳と並べ「最初はこんなに添削したけれど、今はほとんど私が手をいれるところはなくなっている」と比べて見せてくれました。

 

——今でいう「見える化」ですね。

 

梅島:ですね。この上司は、私が入った時に「1年目は、他の皆と同じくらい仕事ができるようになりなさい。2年目はそれを改善しなさい。3年目は次の段階へチャレンジしなさい。3年同じ仕事を同じようにしかできないのは怠け者です」と言われました。

まさにその2年目の終わり、3年目に入ろうというときに、人事部のMTP(マネジメント・トレーニング・プログラム)のトレーニングコンサルタント候補に私が挙がげられたのです。
それは面白そうだ、チャレンジしてみたい、とボスに相談したところ、大変立派な推薦状を書いて快く送り出してくれました。このボスでなければ、私はずっと翻訳をやっていたかもしれません。

 

社員1人1人の長所を早く見つけるーー早期アセスメントが重要

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——そこから、人材コンサルタントとしてのキャリアを歩まれるわけですね。

 

梅島:はい。そういった自分自身の経験もあるため……というわけでもありませんが、弊社は、社員1人1人の長所を早く見つけるーー早期アセスメント(※情報を収集・分析し、解決すべき課題を把握すること。評価・査定などの意味でも使われる)が重要だと考えています。クライアント企業様にも、社員の長所を考えながら配置を決めていくほうが、人材が大きく成長できると伝え続けています。
例えば、宇宙飛行士の選抜メンバーに入れていただいた時などは、自分の経験のない環境の中で、どんな能力や行動が必要なのかを考えるためNASAから資料を送ってもらったり、潜水艦ポラリスのことを調べたりして苦労をしました。

 

——そうやって長所を考え、アセスメントしていったのですね。

 

梅島:必要な能力を持っていさえすれば、他の能力は飛び抜けて高くなくてもいい。私なんて、行動力はあっても忘れ物の名人ですよ(笑)。重要書類を「あっ! ない!!」という場面なんてしょっちゅう。すると秘書がニヤっと笑いながらスーーっとコピーを出してきます(笑)。
私の短所は周りの人がすぐわかって、助けてくれています。あの人をこの人にサポートさせて、という組み合わせで何とか物事がまがりなりにも進んでいきます。そういうことを見定めて人の配置を考えることが必要となります。

 

——従業員の評価は、短所を見るのではない、と。

 

梅島:もちろんです。短所なんて考えなくていいとすら思います。新人だけではなく、誰でも自分のキャリアは自分で作りあげるものですし、キャリア・ビルディングは何歳になってからでも始められます。
自分自身の長所を知り、それを伸ばしていくような教育プログラムを作り続けることをしていきたいと思っています。これからますます個人の責任の時代になるでしょうから、各社の人事の方は、このことに取り組んでいただきたいと思っていますが。

 

後編「今後、求められるコンサルタントとは」へ続く。>>後編はこちら

 

プロフィール

梅島みよ 氏

1944年津田英学塾卒業。在日米軍人事部(訓練部)での管理者訓練トレーナーなどを経て、1966年マネジメントサービスセンター設立。同社代表取締役社長、取締役会長などを経て、現職。日本における経営コンサルタントのパイオニアとして知られる。

www.msc-net.co.jp

著書に『頭がいい人をおやめなさい』(日本経済新聞出版社)、『日本の課長の能力』(日本経済新聞出版社)『課長の品格』(幻冬舎メディアコンサルティング)、ほか多数。

頭がいい人をおやめなさい

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人を見る目を持つ

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日本の課長の能力 (日経プレミアシリーズ)

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ビジネスマナー入門 (日経文庫)

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