経営・技術大会(2)アスリートたちのマネジメント〜東京オリンピック・パラリンピックに向けて
記事(1)「中島厚志氏 基調講演」はこちら。
続いて、NPO法人スポーツネットワークジャパン及び日本スポーツ学会代表理事、長田渚左氏による特別講演「アスリートたちのマネジメント〜2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて」が行なわれました。
長田氏はノンフィクション作家でもあり、著書である「桜色の魂〜チャスラフスカはなぜ日本人を50年も愛したのか」の紹介、チャスラフスカ氏のビデオを交えながら、スポーツマネジメントを取り巻く問題の指摘と紹介が行われました。
特別講演 アスリートたちのマネジメント〜2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて
まず、スポーツマネジメントとは何かという説明が行われました。長田氏は「スポーツマネジメントとは、選手のお金に関する問題だけではなく、大会やイベントの開催・運営、選手、メディア対応などを含むスポーツ全体のマネジメントを行うこと。スポーツをビジネス的に見る視点が必要である」と語りました。
■前半:オリンピックに向けたスポーツ関連の動きなど
(1)当事者である選手が声を上げないことが大きな問題である。それは、日本のスポーツ界の「上下関係」が大きく影響しているのではないか。
(2)エンブレム問題
(3)スポーツ庁初代長官に元水泳選手である鈴木大地氏が選出された問題について
など、スポーツに関わり30年を超えるという幅広い経験・知識を余すところなく披露。そのユニークな語り口に、聴衆からはどっと笑声が挙がりました。鈴木大地氏については講演の途中で参考ビデオの上映も行われ、その人となりが詳細に紹介されました。
■後半:ベラ・チャスラフスカについて
1964年のオリンピック東京大会にて、女子体操の金メダリストとなった、チェコスロバキア(現:チェコ)の選手ベラ・チャスラフスカ。かつて「5輪の花」とも呼ばれた彼女の激動の人生を追った長田氏の著書「桜色の魂〜チャスラフスカはなぜ日本人を50年も愛したのか」から、彼女の生きざまを紹介。
1964年の東京大会にて金メダル3つ、1968年のメキシコ大会では4つのメダルを獲り、国家的英雄となってからプラハの春〜2000語宣言、恩師の死などを乗り越え、重い心の病から回復。3.11の震災後には慰問に訪れ、被災地である大船渡市の中学生をチェコに招くなど日本への支援を長く続けていることを紹介しました。
その心にはどんな思いがあったのか。彼女と永きに渡り密接に関わってきた長田氏だからこそ伝えられるチャスラフスカの魅力と日本との深い絆を、東京大会当時のスライド上映を交えながら語られました。
長田氏は最後に、「東京オリンピック当時の事故による死亡者はとてつもなく多かった。日本には、こういう側面もあるということを知っていていただきたい。これから2020年東京大会に向け、各種工事が始まっていく中で、突貫工事も出てくるかもしれません。その状況には、私たちは目をつぶってはいけないと思います。
また、年間数万人の自殺者が出る日本という国で、スポーツが何か活用できることはないかといつも考えています。スポーツ観戦でもいい、何か自分で初めてもいい。スポーツには、単に勝ち負けではない「心に与える大きな力」があります。私も小さい時は喘息持ちで運動は苦手な子どもでしたが、趣味のボクシング観戦によって心が解放されました。みなさんにもっとスポーツの広さは深さを知っていただき、さまざまな問題活用に利用していただきたいと思います」と語りました。
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長田氏の溌剌としたユニークな語り口は、会場に集まった聴衆を強く引き込んでいました。2020年のオリンピック東京大会に向けて各種業界が動きを見せる中、「スポーツマネジメント」からの視点は来場者に大きな気づきを与えたことでしょう。
講演者:ノンフィクション作家。NPO法人スポーツネットワークジャパンおよび日本スポーツ学会代表理事。 スポーツ総合誌『スポーツゴジラ』編集長/長田渚左氏