zen-noh-ren’s diary

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欧米自動車メーカー・アフターセールス事業改善から見た海外でのコンサルティングの将来:発表会レポート(後編)

【後編】 成長・注目すべき市場、アジアについて

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(1)市場の実情 世界主要60ヵ国の合計自動車販売台数の推移を紹介。

データによれば、欧州、アジア太平洋、日本は、中国・北米に次ぐ重要な自動車市場である。 全世界の自動車ディーラー数の多くは欧州に偏っており、店舗数を見ると「西・中央・東・ロシアを含めた欧州地域」は90,000店舗。

これは、全世界の54%である。そして日本とASEAN全土を見てみると、合わせて9,000店舗で、5.5%にとどまっている。

 自動車販売の増減は、その国の政治や経済に大きく影響を受ける。内紛、クーデターはもとより、経済制裁により大きな打撃を受けている国では販売数が減少し、社会主義からリベラルへと国家が変貌するにつれ販売数は増加していく。

政治・経済の動きもマークしながらプログラムに取り組んでいくのだと正木氏は語った。

(2)今後の動向

2014年、世界主要60ヵ国合計の販売台数は前年比3.6%増の8,224万台となり、過去最高記録を更新した(中大型商用車は除く)。これは、中国が前年比7.6%増という大幅な伸びを見せたためである。一方で中国以外の新興国では縮小傾向が目立った。これらは政治・経済情勢の悪化が原因のひとつである。

欧州の自動車普及が飽和状態に近づいている現在の市場では、新規購入の伸びは停滞するが、アフターセールスのニーズは増加するのではないかと予想された。

(3)自動車アフターセールスにおいて、今後注目すべきニーズ

欧米でのニーズは、「大衆車」と「高級車」に分けられる。

大衆車は、新車販売がますます落ち込むことが予想される中、「待ち時間が短く予約しやすく明朗快活なディーラー」が求められていくだろうと予測された。これは日本では当たり前のことだが、ヨーロッパではまだまだサービスが未成熟であり、今後、発達できる分野ではないだろうか。

そして「高級車」の場合は、販売台数は経済状態に関係がないが、今まで以上に顧客の要求や期待も値段につれて高級化していくことが予想された。今後求められるのは「セールス・アフターセールス部、どちらも顧客一人ひとりの要求に対応できる高級感あるディーラー」ではないかと正木氏は語る。

また、アジアの大衆車・高級車へのディーラーニーズの予測・分析もされ、参加者は興味を持って聞き入っていた。 最後に、「今後の自動車アフターセールス・サービスへの期待と夢」というテーマでは、2つのサービスセンターの構想が挙げられた。

ひとつは「レストランでディナーをとっているうちに車の整備や修理が終わる」「ショッピングモール無いに組み込まれた整備・点検サービスセンター」など、自動車サービスと他サービスが提携することにより、ユーザーによってより便利なサービスの提供。 もうひとつは「ガラス交換、タイヤ交換、バッテリー交換など、専業に特化したサービスセンター」。

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この2つの方向で、より広く、より深いサービスを行う施設を充実させ、業界全体の活性化を見据えて考え直していくことで、ユーザーに求められる高度なコンサルティングにつながっていくのではないだろうか。

(完)

 

正木公一:日白協会兼商工会議所、理事会役員、文化コミッティー会長。日本能率協会、欧州エージェンシー、ブラッセル責任者。日本能率協会コンサルティング、欧州法人副社長。